アメリカの貿易関係は、トランプ大統領が非常事態経済権限を前例のない形で行使することで、大きな影響を受けることとなります。2025年2月28日、アメリカの主要貿易相手国であるカナダおよびメキシコからの輸入品に対して25%の関税が発効し、中国からの輸入品には追加で10%の関税が課されました。さらに、カナダからのエネルギーに対しても10%の関税が適用されることとなりました。
これらの関税がもたらす影響は多岐にわたり、アメリカの貿易に強い影響を及ぼすことが予想されています。2024年のデータによれば、メキシコ、カナダ、中国との貿易がアメリカ全体の商取引の約40%を占めており、これらの国々との貿易は経済において非常に重要な役割を果たしています。関税導入後は、貿易業者が負担するコストが直接消費者に転嫁され、生活費が上昇することが予想されています。税制政策センターによれば、トランプ大統領の関税政策により、2026年までに平均家庭にとって年約930ドルの追加コストが生じる可能性があります。
特に、生鮮食品や果物の価格が短期間で上昇する見込みであり、ターゲット社のCEOであるブライアン・コーネル氏は、メキシコからの果物や野菜に課される関税が消費者価格に即座に影響を与えると述べています。関税は予告なしに導入されるため、貿易業者には遡って請求書が発行される可能性もあります。
トランプ大統領は、中国からの輸入品に対しても、10%の関税を倍増させ、合計20%の追加関税を課しています。このように、カナダ、中国、メキシコとの貿易は、2024年においてアメリカの海外貿易全体で2.2兆ドルに達し、そのうちメキシコとの貿易が8400億ドル、カナダが7620億ドル、中国が5820億ドルを占めていることからも、これらの政策の影響の大きさが伺えます。
トランプ大統領がこの権限を行使することには国際的な商業における力の強さが反映されていますが、その一方で法的挑戦を招く恐れもあります。非常事態経済権限法(IEEPA)は、本来は外国の独裁者やテロ組織に対する制裁を目的として使用されてきましたが、トランプ政権はこれを「異常で特異な」脅威とみなし、急速に関税を導入しています。
関税導入による混乱は、特に「デ・ミニミス」輸入品に関して顕著です。デ・ミニミスとは、800ドル以下の価値を持つ国際的な個人輸入品を指し、これまで関税から免除されていましたが、トランプ大統領はこれらにも関税を課す方針を示しました。国際的な郵便システムにおいても、関税の徴収体制が整わないまま新たな関税が導入され、混乱が生じています。
トランプ政権は、このような新たな関税を導入するために、米国郵便公社に短期間でシステムを整えるよう求めていますが、その整備には時間がかかる見込みです。関税収入を迅速に徴収するためのインフラが不十分な中で、関税の実施がどうなるかは今後の課題です。



