中国の製薬会社Hengrui PharmaとアメリカのKailera Therapeuticsが共同開発した週一回の実験的な注射薬が、中国での後期試験において好結果を示し、承認申請の見込みが立ちました。この注射薬は、肥満治療を目的としており、エリ・リリー(Eli Lilly)やノボ・ノルディスク(Novo Nordisk)からのブロックバスター薬に対抗するポテンシャルを持っています。
この薬は「HRS9531」と呼ばれており、48週間の試験で患者は平均して体重の約18%を減少させ、プラセボ群と比較して16%以上の体重減少を達成しました。試験に参加した患者の約90%が少なくとも体重の5%を減少させ、44.4%が体重の20%以上の減少を見込みました。また、48週間時点で体重減少の停滞は見られなかったとのことです。
安全性の具体的なデータは公開されていないものの、大部分の副作用は軽度から中等度の消化器系のものであるとされています。Hengruiは中国での薬の承認申請を行う予定で、一方、Kaileraはより高用量の患者を対象としたグローバルな試験を開始することを発表しました。
HRS9531は、体内で自然に生成されるホルモンであるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)と、グルコース依存性インスリン分泌ポリペプチド(GIP)を活性化させ、胃の空腹感を抑えることによって食欲を減退させる作用があります。これによって、食事の満腹感がより長く持続されることが期待されています。
エリ・リリーの週一回の注射薬Zepboundも、同様のホルモンを活用し、72週間の試験で患者の体重を最大21%減少させる成果を上げています。しかし、HRS9531は500人以上の患者を対象として短期間の試験を実施した結果でも、注目すべき体重減少を示しており、長期間の効果に期待が寄せられています。
また、デンマークのノボ・ノルディスクのWegovyはGLP-1のみにターゲットを絞った治療薬です。
今後の市場展開には数年かかると予想されていますが、HRS9531の結果は期待できるものであり、肥満治療薬市場での競争に新たな風を吹き込む可能性があります。



