アップル(Apple)の最高経営責任者(CEO)、ティム・クック(Tim Cook)が2024年12月12日にロンドンのアップル本社を訪れた際に親指を立てる様子が報じられました。
米国政府が、英国がアップルにユーザーの暗号化データへのアクセスを与える「バックドア」の提供を求める要求を取り下げることに合意したと発表し、アップルが大きな勝利を収めました。この結果に喜ぶのはアップルだけではありません。政府間での広範な協議の結果、国家安全保障上の懸念から、この要求が取り下げられたことが背景にあります。
この論争の核心には、エンドツーエンド暗号化技術が存在します。この技術により、二つのデバイス間の通信が確保され、チャットサービスを提供する企業でさえ、メッセージの内容を確認できないというものです。
このアップルの英国におけるプライバシー闘争は、今年初めに報じられたことから始まりました。英国政府がアップルの暗号化クラウドサービスへのアクセスを技術的な「バックドア」を通じて求めていたのです。
アップルはこのようなバックドアの提供に反発を続けてきました。例えば、2016年には米連邦捜査局(FBI)が、カリフォルニア州サンバーナーディーノで発生したテロ攻撃の実行犯が所持していたiPhoneのロックを解除するためのソフトウェアの作成をアップルに求めました。
他の企業も政府のエンドツーエンド暗号化を弱体化させる試みから防御しなければなりませんでした。たとえば、メタ(Meta)がFacebook Messengerアプリの全メッセージを暗号化する計画を発表した際、英国内務省から非難を受けました。メタはすでにWhatsAppで暗号化を提供していました。
今回の発表は、エンドツーエンド暗号化を巡る国際的な議論に広範な影響を与える可能性があります。政府や法執行機関は、テロや児童性的虐待に関連する犯罪捜査を支援するために、そのような暗号化システムを破る方法を求めています。しかし、テクノロジー企業は、バックドアを構築することがユーザーのプライバシーを損なうだけでなく、サイバー攻撃のリスクを高めると指摘しています。サイバーセキュリティの専門家は、政府のために構築されたバックドアは最終的に発見され、ハッカーによって悪用される可能性があると警告しています。
また、米国の国家情報関係者も、アップルがそのようなバックドアを提供することへの影響について懸念を抱いていました。
英国による暗号化に関する譲歩は、アップルにとって利用者のクラウドデータをより安全に保護するための「高度なデータ保護(Advanced Data Protection:ADP)サービス」を再開する可能性を意味しています。このサービスは、今年2月に英国向けの提供を停止していました。
現時点では、アップルが英国市場にADPサービスを再提供するかどうかは明らかにされていません。



