Alphabet(アルファベット)の健康技術子会社であるVerily(ヴェリリー)が、25,000人以上の患者の健康データを無断で使用し、その違反を隠蔽していたと、元幹部のライアン・スローン(Ryan Sloan)が主張しています。スローン氏は、健康保険の携行性と責任に関する法律(HIPAA)に違反する事例を発見し、その懸念を会社の上層部に報告した後、解雇されたと訴えています。
アメリカにおける患者データはHIPAAによって保護されており、患者の同意なしに機密情報が公開されることはありません。この訴訟は、サンフランシスコの連邦裁判所で進行中であり、昨年末に提起されたもので、未だ報道されていない内容です。先日、裁判長はVerilyによる訴訟の却下や仲裁への回付の要求を却下しました。
Verilyの広報担当者は、スローン氏の主張が全くの根拠がないものであるとし、法的手続きを通じて自身を守る意向を示しました。また、企業は法令遵守に対する責任を真剣に受け止めていると強調しています。
Verilyは2015年にAlphabetのイノベーションラボX(旧Google X)内で設立され、医療関連技術の開発に注力してきました。スローン氏は2020年にVerily Onduoの商業責任者として雇われましたが、2022年1月には、Verilyが悪用した患者の保護された健康情報について疑念を示したとされています。
スローン氏とオンデュの法務責任者ジュリア・フェルドマン(Julia Feldman)は、Verilyが患者の情報を不適切に使用していることに気づき、具体的には研究やマーケティングキャンペーン、プレスリリースなどで使用されていました。訴状によれば、この違反により、Onduoの糖尿病プログラムに参加していた25,000人以上の患者が影響を受けたとされています。
VerilyはHIPAAに基づき、違反を発見後60日以内に影響を受けた当事者に通知を行う必要がありますが、スローン氏の訴状によれば、Verilyはその決定を遅延させたとされています。また、側面からは契約更新の交渉中にこの違反を開示することなく進めたと述べられています。
訴訟はVerilyにとってさらに複雑な状況を呈しています。現在、Verilyは再度の資金調達に向けて株式会社へと移行する準備を進めていると報じられています。Verilyはもともと持続的なグルコースモニターのようなハードウェアを開発していましたが、その後Covid-19の発生を機に方向転換し、現在は精密医療に焦点を当てた施策を展開しています。
昨年にはAIを活用した新たな慢性疾患ケアソリューション「Verily Lightpath」を発表し、2023年2月には子会社のGranular Insurance Companyを売却する意向を示しています。今後、この事件がVerilyにどのような影響を与えるのかが注目されます。



