カルティエ新作をWatches & Wonders 2026で発表した。ブランドは造形を主軸に、構造・素材・工芸を統合した時計作りを一段と進めている。

カルティエは幾何学的な輪郭を日常の装着性に落とし込むことに長けている。今回の発表ではそれがより顕在化し、腕時計が時間計測の道具を超えて立体作品に近づいている。
カルティエ新作の設計思想と工芸
今回のラインアップは外観だけでなく内部構造にも重点を置く。ジュエリー技術と機械構造の融合が明確なテーマである。
設計は曲線と体積感を強調する方向性だ。装着時に動くことで表情が変わる点を重視している。
Myst de Cartier の立体的表現
Myst de Cartierは1930年代のジュエリーウォッチから着想を得ている。ケースとブレスは伝統的に分離されない構造で、弧形モジュールで接続される。
この設計により、腕に添うたびに形が微妙に変わり視覚的な動きが生まれる。制作面も複雑で、石留めだけで約112時間を要する。

ブランドは異なるサイズの宝石を重ねて層を作る技法を用いる。縞瑪瑙と黒漆で明暗をつけ、無留め具のブレスは内部機構で伸縮する。
Baignoire の表面処理と比率
Baignoireは表面仕上げとプロポーションの制御が中心である。パリの飾り鋲パターンが高密度で全体に施されている。
小さなピラミッド状の立体テクスチャーは角が明確である必要があり、仕上げは人手での研磨が必須だ。手作業でのポリッシュが品質を担保している。

ダイヤモンド装飾モデルは文字盤に約100石を配し、ケースでは逆さ留め技術を使う。光の反射角度が増え、楕円フォルムにシャープな層が加わった。
Santos-Dumont の実用的改良
Santos-Dumontの更新は控えめだが着用感に直結する改良がある。新しいメタルブレスは15列、合計394コマで構成される。
各コマの厚さは1.15ミリに抑えられ、柔軟性が向上した。文字盤には金曜石を採用し、厚さは0.3ミリという薄さだ。

ケース径は31.4ミリで、手巻きムーブメントの約43時間のパワーリザーブを備える。薄型とエレガンスのバランスを保つ意図が明白だ。
Cartier Privé と Crash の技術性
Cartier Privéは第10章に入り、歴史的デザインの現代的再解釈を続ける。Crashのスケルトンは技術的に高い水準である。
Crashのスケルトンは1967 MC手巻きをベースにする。ムーブメントは142の部品で構成され、ローマ数字を橋板にするという独自設計だ。

不均衡なケースに合わせるため、ムーブメントも一から設計し直した。橋板の手打ち装飾は1枚で約2時間を要する。限定150本でコレクター向けの明確な位置付けだ。
Roadster の復刻と日常性の両立
Roadsterの復刻は2000年代のデザイン回帰を示す。酒樽形ケースと流線が保たれつつ比率を見直し、線を締めた。
日付拡大窓などの象徴的要素は残し、ムーブメントは大中サイズで1847 MCと1899 MCを採用する。パワーリザーブは約38〜42時間で、素材はステンレス、ゴールド、コンビを用意する。
総じて今回の発表は、ジュエリー性と機械的精緻さを両立させる試みといえる。カルティエ新作は装飾と構造の両面で新たな地平を示した。

