Gemini代理はGoogle I/O 2026で示された中核構想だ。GoogleはAIを単なる対話窓口から、Search、アプリ、購買、そして眼鏡といった現実のインターフェースまで広げる計画を示した。
核心は「Gemini代理」システム
今年の主要な更新は二つの流れに集約される。ひとつはモデル面での強化、もうひとつは製品への統合だ。Gemini 3.5ファミリーと世界モデルのGemini Omniを軸に、多数のサービスへ代理能力を組み込む。
利用者の関心は大きく分けて四つに整理できる。毎日の情報管理、創作・生成コンテンツ、ネット購買の再設計、そして現実空間にかける未来インターフェースである。
- 日常利用:Google 検索とGemini App(Daily Brief、Spark)
- 創作・編集:Gemini Omniによる映像生成、Google Flow、Google Pics
- 購買・決済:Universal CartとUCP/AP2
- 未来の画面:スマートグラスとProject Genieの街区サンドボックス
1. Gemini 3.5 Flash:代理の新エンジン

Gemini 3.5 Flashは3.5世代の先陣モデルだ。高速な出力と低コストで長期タスクや反復が必要なAgent処理を狙っている。
Googleによれば、3.5 Flashは前世代の3.1 Proを上回る性能を複数のベンチマークで示した。特にコーディングや長期計画、実務価値の高いタスクで差が出たという。

出力トークン速度は他の最先端モデルの約四倍とされる。これにより同じハード予算で多数のユーザーや製品、背景Agentを支えやすくなる。
このモデルは開発者向けだけでなく、Google製品の既定エンジンにもなりつつある。Gemini App、AI検索モード、Antigravityプラットフォーム、企業向けのGemini Enterpriseなどで採用が進む。
2. Gemini Omni:映像を扱う世界モデル
3.5 Flashが「脳」であるとするなら、Gemini Omniは現実の映像を理解し再構成する「感覚」の役割を果たす。テキスト、画像、音声、既存の映像を組み合わせて高品質の映像を生成する。
最初に提供されるのはGemini Omni Flashで、スマートフォンで撮った一般的な映像をアップロードし、自然言語で光量や背景、カメラの動き、物語の流れを変更できる。登場人物の一貫性や物理的整合性、画面の連続性を保ったまま「話して再撮影」できる時間軸を生成する。
公開戦略としては、Omni FlashをまずGemini AI Plus/Pro/Ultraの加入者向けに提供する。Gemini AppやGoogle Flow内で使えるようにし、YouTube ShortsやYouTube Create Appにも無料で導入する。後にAPIを通じて開発者と企業にも開放する予定だ。
3. Gemini App/Daily Brief/Spark:助理から常駐代理へ
Gemini Appは全面的に刷新された。新しい「Neural Expressive」デザイン言語を採用し、アニメーションや配色、レイアウトを滑らかにした。音声の即時対話も組み込まれ、入力の手段が多様化する。
Daily BriefはAIによる朝のダイジェストを作るAgentだ。ユーザーの許諾を得てGmail、カレンダー、Tasksを継続的に読み、緊急メールや重要会議、ToDoを短くまとめて優先度と次の行動案を提示する。
Gemini Sparkは24時間稼働する個人用AI Agentで、Gemini 3.5とAntigravityハーネスを核に長時間にわたる多段階タスクを実行できる。請求書の解析や会議メモの整理、外部サービスへの接続まで担当する。
Sparkはまずトラステッドテスター向けに提供され、その後米国でGoogle AI Ultra加入者向けベータを予定している。今夏にはChrome上で「エージェント化したブラウザ」として登場する見込みだ。
4. AI検索:Information Agentsと生成型UI
検索は引き続きGoogleエコシステムの中核だ。今回は「agentic検索時代」への本格的な移行が発表された。AI Modeは全面的にGemini 3.5 Flashを基盤とする。
新しいinformation agentsは、ユーザーが特定のテーマに対して専用Agentを作れる仕組みだ。住まい探しや株の監視、選手コラボスニーカーの入荷追跡などを継続的に監視し、条件に合えば要点を整理して通知する。
検索は動的に生成する「generative UI」を表示する。インタラクティブな図表や表、シミュレーター、長期タスク用のダッシュボードを作り、ユーザー専用のミニアプリに近い体験を提供する。

これらのgenerative UI機能は今夏に全Searchユーザーへ無料提供される予定だ。カスタムダッシュボードやAntigravityで作られた体験の一部は、まず米国のGoogle AI Pro/Ultra加入者に提供される。
5. Universal CartとUCP/AP2:購買体験の再設計
GoogleはUniversal Cart(通用カート)を導入し、検索、Gemini、YouTube、Gmailなどに散在する購買行動を一つにまとめる。どの画面からでも商品を同一カートへ送れる仕組みだ。

カートに入ると自動で割引検索や価格履歴の追跡、在庫変動の監視を始める。自作PCの組み立てでは互換性チェックや代替候補の提示も行う。決済はGoogle Walletを基盤に、カード還元や会員ポイント、店舗割引を考慮して最適な支払い方法を提示する。
通信の共通語としてはUniversal Commerce Protocol(UCP)が導入される。支払いの境界を規定するAgent Payments Protocol(AP2)は、代理に対して特定店舗や金額範囲でのみ支払権限を与えるといった制御を可能にする。

Universal Cartは今夏、まず米国のSearchとGemini Appで立ち上がる。Nike、Sephora、Target、Walmart、Wayfairといった大手やShopify加盟店でワンクリック決済をサポートする予定である。
6. スマートグラスとProject Genie:AIが画面外へ
ハード面ではGoogleが音声支援のaudio glassesと、視野に情報を重ねるdisplay glassesを示した。両者はGeminiと連携し、音声で道案内や情報照会、通知を行う。
audio glassesは今年秋の先行発売が予定されている。display glassesの提供時期は未定だが、Geminiとの連携が想定されている。
Project GenieはStreet Viewの長年のデータと生成AIを組み合わせた3Dサンドボックスだ。建物外観の変更や街路配置の調整、架空要素の追加が可能で、建築設計や都市計画、ゲーム開発、観光の試作に使える。

Googleの構想では、デスクトップでGenieを使い街を編集し、現地でスマートグラスをかけて未来版の街景をオーバーレイ表示する、といった連係が想定されている。
7. Content CredentialsとSynthID:透明性の基盤
生成コンテンツの真偽が判別しにくくなる中で、GoogleはSynthIDとContent Credentialsを拡張した。SynthIDは不可視の埋め込みマークで、既に千億点以上の画像・映像や長年分の音声素材に適用されているという。
今年はSearchとChromeにも検出ツールを組み込み、閲覧中に画像や映像が生成・編集されたかを確認しやすくする。パートナーとしてNVIDIAに加え、OpenAI、Kakao、ElevenLabsがSynthIDの採用を表明し、横断的なコンテンツ基準の構築を試みる。
どこまでAIに任せるかの問い

今回のI/Oで重要なのは、新機能の数ではなく、Gemini代理としての体系化だ。Searchで情報を追跡し、Gemini AppのDaily BriefやSparkが生活を補助し、Universal Cartが購買を代行する。将来はスマートグラスやProject Genieで現実世界にも重ねられる。
最大の問いは「どれだけの生活と業務を常駐するクラウド代理に任せるか」である。あなたがAI検索やGemini Appの新機能を使い始めると、その答えは徐々に明らかになるだろう。



