アメリカ合衆国の首都ワシントンD.C.では、トランプ大統領がメトロポリタン警察の連邦管理を発表したことに伴い、国家警備隊の兵士を数百人展開する姿勢を示したことが注目を集めています。この動きは、犯罪予防を目的とした連邦法による取り組みの一環として位置付けられていますが、実際にはワシントンD.C.の暴力犯罪は過去30年間で最も低い水準に達しているという統計が示されています。
ワシントンD.C.のメイヤー、ミュリエル・バウザー氏は、犯罪率の上昇を否定し、実際には犯罪数が減少していると強調しました。彼女は「私たちは犯罪の急増を経験していない」と述べています。一方、2023年には殺人件数が1990年代以来の高水準に達し、車両強盗も急増したというデータが示されていますが、それ以降はこの傾向が変わりつつあるとのことです。
最近のワシントン・ポストの調査によると、65%のワシントン市民がD.C.の犯罪が「非常に深刻な問題」であると感じており、2024年に記録された犯罪の減少にもかかわらず、この認識は依然として高いとされています。このような認識は、TikTokやInstagramなどのビジュアルプラットフォームから発信された情報にも影響されていると考えられています。
また、YouGovが実施した全国調査によると、アメリカ成人の34%が都市での殺人件数が1990年以来「大幅に増加した」と回答しており、実際のデータとは乖離している現状が浮き彫りになっています。バウザー氏は、犯罪が人々に与える感情的な影響が、この認識のズレの一因であると指摘しております。
政策アナリストであるジェフ・アッシャー氏は、「国民は常に犯罪が増加していると考えがちであるが、データがそれを示していない」と言及し、政策決定は感覚的なものではなく、実データに基づくべきであると主張しています。しかし、安心感を与えるためには、認識の問題にも対処する必要があると続けました。
さらにアッシャー氏は、ワシントンD.C.の殺人率は他の大都市と比較しても高い状態にあり、犯罪が減少していることを理由に安易に安心してはいけないと警鐘を鳴らしています。彼は「市の状況は依然として改善の余地がある」と警告しています。



