エピック・システムズ(Epic Systems Corp.)の創業者でありCEOであるジュディ・フォークナー(Judy Faulkner)は、1979年にウィスコンシン州の地下室でその会社を立ち上げ、以降82歳を迎えた今もその舵を取り続けています。エピックは、医療記録ソフトウェアの分野で圧倒的なシェアを誇り、年間570億ドルの収益を上げる企業に成長しましたが、その成り立ちと運営方針は非常にユニークです。企業の基本方針として「公開市場に出ないこと」「買収されないこと」「ソフトウェアの機能性を最重視すること」を掲げ、特に公共企業にならないことには強い思い入れを持つフォークナーは、投資家の期待に応えることができない事に懸念を抱いています。
フォークナーはエピックを設立する際、資本をベンチャーキャピタリストから調達することを一切拒否し、企業文化と独自性を保つことを最優先としました。彼女の指導の下、エピックは全米の急性期医療病院の約42%が使用する医療記録ソフトウェアとして確固たる地位を築き、ただOracle Health(オラクル・ヘルス)の23%に対して圧倒的な支持を得ています。
今週月曜日には、エピックの本社で毎年恒例のユーザーグループ会議(Users Group Meeting)が開催され、医療業界の幹部たちが集まります。この会議は、エピックの進捗報告や顧客との交流を大切にする場となっており、実際に医療機関と患者との関係を深めるための重要な機会です。
フォークナーはまた、エピックが直面する批判についても正直です。ユーザーエクスペリエンスや異なるシステム間の互換性についての指摘があり、多くの医療従事者がその使い勝手に問題を抱えていると言います。しかし、彼女は「医療従事者の中にはエピックを使いやすいと感じる人もいれば、そうでない人もいる」と述べています。
さらに、ジュディ・フォークナーは自らの資産の99%を慈善活動に寄付することを誓った「ザ・ギビング・プレッジ」に署名しており、彼女の家庭財団「ルーツ&ウィングス」(Roots & Wings)は、低所得層の子供や家族を支援する活動を行っています。彼女はこれらの取り組みを通じて、企業の社会的責任を非常に重視していることが伺えます。
エピックが提供する医療記録ソフトウェアの市場での支配力は、企業の成長を妨げる競争や非競争的な慣行についての訴訟も生じていますが、フォークナーは公正な競争を信じており、顧客が自分たちのニーズに合った最適なソリューションを選ぶ権利があると強調しています。
長年にわたり、フォークナーはエピックの文化を守るために、公共企業化や他社との合併に対して強い拒否の姿勢を貫いてきました。彼女のリーダーシップと独自の企業文化は、医療業界におけるテクノロジー企業の中からひときわ際立っています。エピックは、今後も市場の変化に適応し続けるため、継続的な努力が求められるでしょう。さらに、AIやデジタル化が進む中で、フォークナーのビジョンが医療の未来にどのような影響を与えるか注目です。



