自動車業界において、新たな潮流を巻き起こすべく出現した電気自動車スタートアップ企業Slate Autoが、ミシガン州レイクオリオン郡にある生産施設で従来の製造プロセスを一新しようとしています。Slate Autoは、アマゾンの創設者であるJeff Bezosによる支援を受けており、同社の「ベータ」生産ラインでは、既に70台以上のプロトタイプが内部テスト用に製造されています。この施設は、ゼネラルモーターズの巨大な組立工場にほど近く、アメリカ市場に向けた自動車の製造準備を進めています。
Slate Autoの生産するのは、シンプルな設計の2座席・2ドアの電気ピックアップトラックです。製品は他のボディスタイルにも柔軟に対応可能で、特に重視されているのはコスト削減と製造の簡素化です。Slateのエンジニアリング責任者であるEric Keipper氏は、「このアプローチでは、必要最小限の機能に集中し、それを基に全く新しい製品カテゴリーを構築している」と語っています。
Slate Autoは4月に自社の最初の車両を発表し、顧客には名前を付けてもらう姿勢を示しています。販売に向けた手ごたえとして、既に10万件以上の予約を受け付けており、デポジット額は50ドルです。この結果は他の企業の予約状況と比較して際立っています。
また、Slateは現地インディアナ州に新たに生産工場を設立中で、年間最大15万台の生産能力を見込んでいます。この新工場の完成には多くの課題が残されており、量産への道のりは決して平坦ではありません。
Slateが目指しているのは、業界の中で「手頃な価格の電気自動車」を提供することです。実際、ターゲット価格は2万ドル未満であり、数多くの「オフ・ザ・シェルフ」部品を活用することでコストを抑えています。さらに、Slateの車両は、接続機能を持たず、小型の情報表示スクリーンを除いて必要最低限の装備に抑えられています。
しかし、Slateの取り組みに対しては多くの課題も存在します。自動車市場全体で2ドア車の需要の低下や、電気自動車の普及が予想に反して遅れていることが懸念されます。特にSlateが依存する連邦税額控除についての不確実性も影響しています。
Slate Autoの発表イベントに出席したアナリストは、「彼らのアイデアは興味深いが、顧客が自ら手を加える意欲や市場の大きさが実際にどのくらいあるのかが疑問」と指摘しています。また、Slateの電気トラックが市場で成功を収めるためには、4ドアモデルなどの新たなラインナップを追加し、製品展開を拡げる必要があると考えられています。
スレートがこの難局を打破できるかどうかは、今後の展開次第であり、自らのビジョンを具現化するための努力が求められています。



