アメリカ合衆国のドナルド・トランプ大統領が、EU(欧州連合)に対して中国やインドに対し、ロシアの石油購入に対する最大100%の関税を課すよう求めているとの報道が、双方の大西洋を挟んで注目を集めています。この要求に対して、EUはホワイトハウスの意向に従う可能性が低いと見られています。
トランプ大統領は、最近ワシントンで行われた米国及びEUの高官との会合において、この提案を行い、EUが行う関税に対し米国も「対抗する準備が整っている」と伝えられています。この件に関してホワイトハウスは公式なコメントを避けている状況です。
EUの広報担当者は、トランプの提案については詳細を明かさず、EUがインドや中国を含むすべての関連な世界のパートナーと関与していると述べ、その関与は今後も続くとのコメントを出しました。EUは、モスクワに対する新たな制裁手段を準備しており、ロシアの戦争経済に圧力をかけるためにアメリカを「非常に重要なパートナー」と位置付けています。
トランプ大統領が中国とインドに対して関税を求める一方で、ヨーロッパの官僚たちは両国との関係を泥沼に引き込むことに慎重であり、この要求のタイミングが非常に微妙であると指摘されています。アメリカはすでにインドに対して50%の関税を課しており、インドはこれを「不公平で不当かつ不合理」と批判しています。
Eurasia Groupの創設者イアン・ブレマー氏は、トランプの最新の要求は、インドや中国との貿易協定を目指す姿勢と矛盾しており、EUに責任を転嫁する試みのように見えるとコメントしました。ブレマー氏は、ヨーロッパがトランプ氏の tariffs 戦略に従う可能性は低く、EUは自ら進んで自国の利益を損なうような措置を採ることは避けるべきだと考えています。
また、EUはロシアとの取引関係が複雑であり、他国がモスクワと取引を行うことを罰することは難しい局面に直面しています。2024年におけるEUのロシアとの二国間貿易は675億ユーロ(約7,810億円)で、その多くが燃料や鉱鉱製品によるものであるとEU委員会のデータに示されています。さらに、EUはロシアの天然ガスとLNG輸入からの完全な脱却に苦慮しており、2021年時点で40%以上あったロシアのシェアは、2024年には約11.6%にまで減少しています。
トランプ大統領はEUがアメリカのLNGの購入を約束していると主張し、EUはアメリカとのフレームワーク貿易協定の一環として、今後3年間で7500億ドルのオフテイクが見込まれています。アメリカのダグ・バーガム内務長官は、エネルギー分野におけるアメリカの市場シェアを高める方針を強調しています。
この一連の動きは、米国やEUの外交政策におけるさらなる緊張を示すものであり、今後の展開に注目が集まります。



