ロンドン — 英国の金融サービス規制当局が、米国の半導体メーカーNvidia(エヌビディア)との新たな提携を発表し、銀行が安全に人工知能(AI)を実験する環境を提供します。
金融行動監視機構(Financial Conduct Authority、FCA)は、「Supercharged Sandbox」と呼ばれる新しい実験環境を立ち上げ、企業に対してより優れたデータ、技術的専門知識、規制支援を提供し、革新を加速することを目指します。
このプログラムは10月から開始され、英国内の金融サービス機関はNvidiaの加速コンピューティングおよびAIエンタープライズソフトウェア製品を利用してAI実験を行うことができるとのことです。FCAはこの取り組みを「発見と実験の段階」にある企業向けに設計しており、AI開発が進んでいる企業向けには別途ライブテストサービスが用意されています。
FCAのデータ、インテリジェンス、情報部門責任者であるジェシカ・ルス氏は、「このコラボレーションは、AIアイデアをテストしたいがその能力がない企業を支援するでしょう。私たちは企業がAIを活用し、市場や消費者に利益をもたらし、経済成長を支援できるようにします」と述べています。
FCAの新しいサンドボックスは、銀行がプライバシーや詐欺リスクに関する懸念から、新しいAIツールを顧客に提供する際の課題を解決することを目的としています。OpenAIやGoogleなどの大規模言語モデルは、データを海外の施設に送信し、プライバシー規制当局はこの情報の保存と処理方法について警鐘を鳴らしています。加えて、悪意のある人物が生成AIを利用して詐欺を行う事例も報告されています。
Nvidiaは、強力なAIモデルのトレーニングと運用に使用されるグラフィックス処理ユニット(GPU)を提供しています。同社のCEOであるジェンセン・フアン氏は、ロンドンで開催される技術会議で基調講演を行う予定です。
昨年、HSBCの生成AIリーダーであるエドワード・アハトナー氏は、ロンドンの技術会議で金融業界においてAIに関する「多くの成功の演出」が行われていると述べ、金融サービス企業が目立った製品の革新を示すことなくAIの進展を誇示していることを示唆しました。彼は、HSBCのような銀行が数年前からAIを活用している一方で、OpenAIのChatGPTのような新しい生成AIツールは独自のコンプライアンスリスクを伴うと付け加えました。



