HermèsはWatches & Wonders 2025で4つの新作時計を発表しました。構造デザインから機能面まで、時間の概念に対するブランドの解釈と実験をさらに拡張しています。その中で3つの時計――Hermès Cut Le temps suspendu、Arceau Le temps suspendu、そしてMaillon libre――は一時停止というコアテーマに焦点を当て、それぞれ逆跳びモジュール、構造停止メカニズム、隠匿ディスプレイ方式を通じて、時間のリズムに対する独自の解釈を表現しています。もう一つの作品、Arceau Rocabar de rireは、動くフィギュアの装置と装飾技術を組み合わせ、Hermèsならではの馬術美学のクリエイティブな解釈を継承し、今年の展示品に鮮烈な個性を加えています。
エルメス ウォッチ & ワンダーズ 2025 展館デザイン｜光と音が作り出す時間の雰囲気
《一時停止》のテーマに呼応して、HermèsはWatches & Wonders 2025の会場空間を、ビジュアルアーティストSarah-Anaïs Desbenoitが手掛けました。光と影、そして音響が交錯することで、没入感のある観覧体験が作り上げられています。昼夜が移り変わる照明効果に加え、ガラスのカーテンウォールが生み出す都市のシルエットや建築の輪郭が、観客を現実と虚構の境界へと導きます。音響デザインには雨音、都市の喧騒、環境音が重なり合い、緩やかなリズムで感覚が研ぎ澄まされる観察空間を構築。まるで時間が角ごとに一瞬止まったかのような不思議な感覚を体験できる場所となっています。
アルソー ル・タン・シュスペンデュ｜同期レトログラード機能でクラシックを再現、日付と針が“今”に静止
Arceau Le temps suspendu “時間を止める”時計は、2011年にHermèsが初めて発表したクラシックなコンセプトウォッチとして知られています。今年、この時計に新バージョンが登場します。42mmのケースは、750ホワイトゴールドまたは750ローズゴールドで仕上げられており、rouge sellier、brun désert、bleu abysseの3種類のサンレイ仕上げのダイヤルが用意されています。また、非対称の馬蹄型ラグとクラシックなレイアウトが継承されています。
時計側面のボタンを押すだけで、時針、分針、そして日付針が一斉に逆回転して静止します。その後、再び時間の流れが動き出すまで待つ仕組みです。ムーブメントは自社製H1837自動巻きシステムを採用しており、145個のパーツで構成された一時停止モジュールが搭載されています。パワーリザーブは約45時間で、振動数は毎時28,800回。地板とローターには、パールのようなドット模様、サテン仕上げ、そしてHの彫刻模様が施されており、その美しさはサファイアクリスタルのシースルーバックを通して確認することができます。この作品は、静と動の交錯を通じて、日常の《重要な瞬間》を再定義するような役割を果たす逸品です。
エルメス Cut Le temps suspendu｜逆回りのスモールセコンドで遊ぶ時間、幾何学的なローズゴールドがシャープな輪郭を構築
エルメスのCut Le Temps Suspendu（時間を止める時計）は、ブランドならではの哲学的機能と幾何学的な美学を融合させ、Cutコレクションに新たな解釈をもたらします。ケースの直径は39mm、750ローズゴールドを採用したシンプルながら洗練されたデザインです。文字盤は放射状のパターンが楽しめる赤色と白色の2色展開で、24秒間のレトログラード式スモールセコンドを搭載。動きのあるビジュアルとテクニカルな楽しさを兼ね備えています。
ケースの1時半位置にあるボタンを押すだけで、瞬時に《一時停止》機能が起動します。時計の時針、分針、小秒針が一斉に逆跳して原点に戻り、まるで時間がそこで止まったかのように感じられます。そしていつでも再スタートが可能です。腕時計はHermèsが製作したH1912自動巻きムーブメントを搭載しており、133個のパーツで構成された逆跳モジュールと組み合わせ、約45時間のパワーリザーブを提供します。ムーブメントの地板には繊細なパールサテン仕上げと渦巻模様が施され、ブリッジとローターにはヘアライン仕上げやHモチーフの彫刻があしらわれています。このコレクションは多彩なモデルを展開しており、ラバーストラップのスポーティモデルやダイヤモンドが散りばめられたローズゴールドブレスレットバージョンなど、用途やスタイルによって自由に切り替え可能です。Hermèsが現代ウオッチメイキングの言語を自信を持って操る姿勢を見事に体現しています。
Maillon Libre ジュエリーウォッチ｜アンカーチェーンのデザインを採用した隠し文字盤。時計とアクセサリーが一体化し、感性を引き立てる逸品。
Maillon libreシリーズの時計は、Hermèsの象徴的なChaîne d’ancre（アンカーリンク）をデザインの核心に据えています。ブレスレットとブローチの2つの着用スタイルが用意されており、時間表示をジュエリーの構造の中に巧みに隠しています。
腕時計のデザインは流れる波のようなシルエットをもち、文字盤が全体のラインに巧みに溶け込んでいます。控えめで洗練された表示方式が印象的です。各時計は750ホワイトゴールドまたは750ローズゴールドを素材として使用し、クッションカットの赤いトルマリンやダイヤモンドをメインストーンに採用。さらに、数百個のブリリアントカットの宝石が施され、高級ジュエリーならではの層次感と密度感を表現しています。
内部にはスイス製のクオーツムーブメントを搭載し、背面から時間を調整する仕様。デザインは従来の時間を読むための論理ではなく、着用時の感覚や視覚的構造に重きを置いている。このシリーズは機能を重視するのではなく、時計を身に着けるアクセサリーとして再解釈したものであり、Hermèsが時間と形の関係性に再び問いを投げかけた一作となっている。
Arceau Rocabar de rire｜遊び心あふれる馬の舌を出すデザイン、馬のたてがみを象ったインレイ加工と高度なクラフト技術の融合
この新たに登場したARCEAU Rocabar de rireのアートな腕時計は、インスタレーションアートを核とし、動的なユーモアと繊細な工芸を一体化させた一品です。文字盤の中央には、やんちゃそうな表情を浮かべた馬が描かれており、そのデザインはDimitri RybaltchenkoがHermèsのRocabar de rireスカーフのために描いたイラストからインスパイアされています。文字盤9時位置のボタンを軽く押すだけで、オートマトン機構が作動。馬が舌を出す仕草は遊び心たっぷりで、見る者の心を和ませてくれるユニークなデザインとなっています。
全体のデザインは、3つの伝統工芸の融合によって成り立っています。彫刻師が手作業で彫刻刀を使い、馬の立体的なラインを精緻に刻み出します。その後、彩色師が微細なペイント技術で何層にもわたって色をのせていき、各層は窯焼きによって色を固定します。最後に、インレイ職人が異なる色彩を持つ馬のたてがみを1本ずつ背景に丁寧に埋め込み、生き生きとしたストライプ柄のアートワークを完成させます。
41mmのホワイトゴールドケースに、深海ブルーのマットな短吻ワニ革ストラップを組み合わせたタイムピース。内部には、エルメス自社製H1837自動巻きムーブメントを搭載し、約50時間のパワーリザーブを備え、振動数は毎時28,800回。サファイアクリスタルのシースルーバックを通して、ムーブメントの受け板ブリッジや自動巻きローターに施されたサテン仕上げとHモチーフの彫刻を鑑賞できる。一つ一つが匠の技を物語る細やかなディテールが魅力。この時計は世界限定12本で、コレクション性に優れている。
