IWC パイロットの新作「Pilot’s Venturer Vertical Drive IW328601」がWatches and Wonders ジュネーブで発表され、ブランド初の宇宙飛行認証を取得した。
このモデルは既存のパイロットウォッチの延長線上にあるのではなく、宇宙飛行や宇宙での計時用途を想定して一から設計されたツールウォッチであるとIWCシャフハウゼンは説明している。
IWC パイロットのVertical Drive方式と操作系
最大の特徴は従来のリューズを廃し、Vertical Driveと呼ぶ新開発の操作機構を採用した点である。
この特許出願中の構造は、回転ベゼルで内部のクラッチを作動させ、動力を機械式ムーブメントに直接伝える仕組みである。ケース側面にはレバー式の切り替えスイッチを設け、上巻き、時刻調整、第二時間帯設定を切り替えられる。

視認性と宇宙環境を想定した表示
ダイヤルは機能重視のマットブラック仕上げで、反射を抑えて情報配置を明瞭にしている。中央の時分針が基準時を示し、外縁の24時間目盛りは独立針で参照時間を表示する構成だ。
宇宙では90分程度で地球を1周するため、宇宙飛行士は1日に約16回の日の出と日の入りを経験する。そこで多くがUTCやGMTを基準に用いるが、IW328601もその運用に対応する表示設計となっている。3時位置に日付表示を備え、夜光塗装は主時間針を緑、24時間針を青に塗り分けて低照度下での識別性を高めている。

ムーブメントとデュアル上巻き機構
搭載するのは新開発の自動巻きCaliber 32722で、GMTモジュールを内蔵し、最大120時間のパワーリザーブを実現している。
自動巻きローターによる通常の巻き上げに加え、回転ベゼルを使った手動上巻きが可能な二重上巻き設計であり、微小重力や無重力下でも安定した駆動を目指している。

素材と耐環境性能
ケースは白色の酸化ジルコニウム(ジルコニアセラミックス)を採用し、高硬度と耐擦傷性を確保している。ベゼルと裏蓋はIWCが開発したCerataniumを用い、チタンの軽さとセラミックの耐久性を兼ね備える素材である。
ベルトは白色のFKMラバーを採用し、紫外線や急激な温度変化への耐性を想定した素材選定だ。これらの仕様は宇宙ミッションの過酷な環境を念頭に置いたものである。
試験と宇宙飛行認証、価格
IWCによると、本機は宇宙技術企業Vastの実施した高強度振動や気圧変動などの環境試験を通過し、同社から宇宙飛行認証を取得した。
また、このモデルはVastが計画するHaven-1ミッションでの利用が見込まれており、IWCはツールウォッチの適用を航空領域から宇宙探索へと拡大するとしている。価格は28,200米ドル(約423万円、税別)に設定された。
総じて、IW328601は操作系、表示、素材、動力源の各側面で宇宙環境を念頭に置いた設計が施されている。IWC パイロットの新作として、実用性を重視したアプローチが示されたモデルである。



