ビルバオ美術館は、長さ55メートルの白い新館「Agravitas」を空中に懸架し、10月5日に再公開した。

新拡張「Agravitas」は、英建築事務所のフォスター・アンド・パートナーズ(Foster + Partners)と、現地建築家ルイス・マリア・ウリアルテ(Luis María Uriarte)が共同で設計した。
設計を主導したノーマン・フォスター(Norman Foster)は、この構想を「ほとんど常識外れ」と形容した。数千トン級のボリュームが空中に浮かぶように見えるが、既存の赤レンガ建築には一切触れずに据えられている。

プロジェクトは、ビルバオがここ30年で経験した都市更新の文脈に応答するものだ。1997年にフランク・ゲーリー設計のビルバオ・グッゲンハイム美術館が完成して以降、「ビルバオ効果」は都市再生の典型になった。
フォスターは敢えて目立つ造形を追わず、抑制的で退くような介入を選んだ。新館はビルバオ美術館の歴史的景観を保全しつつ、都市の中心に新たな公共空間を生み出す設計である。
このような大断面を既存建築と接触させずに空中設置するため、構造設計が最大の鍵となった。構造はスペインの著名な構造設計事務所、MC2 Estudio de Ingenieríaの創設者フリオ・マルティネス・カルソン(Julio Martínez Calzón)が主導した。

支点の選定は極めて厳密だった。既存建築群の狭い隙間に、直径71センチ・長さ11.5メートルのV字鋼管柱を2組精密に据え付けた。
V字形状は荷重を外側に分散し、最少の接地点で側方の風圧や地震力に対する安定性を確保する。初めの鋼柱が正確に据えられたことで、空中に渡る大桁の施工が成立した。

展館の本体は無柱空間を実現するための箱形深梁桁架である。長さ55メートル、幅30メートルの箱形構造がそのまま深桁を兼ねる。
上下二層の展示空間は、桁架の深さを層間に巧妙に隠すことでトップフロアに約1,300平方メートルの無柱展示空間を確保した。中央には直径6メートルの円形吹抜けが貫通し、上下の視線が連続する。

工期中も美術館の通常運営を維持するため、工事は段階的に進められた。展館は公園側へ大きく懸挑しており、V字柱と箱体の剛性で傾覆モーメントに対抗する。
建材は現地で精錬された低炭素鋼を採用し、地域の製鉄業の伝統に呼応した。大庇は下方のガラス大堂に日射遮蔽を提供する一方、屋上には500平方メートル超の太陽光パネルを敷設して再生可能エネルギーを導入している。

下部のArriaga広場は透明なガラスで囲まれた屋内中庭に改修され、全面的に無料開放される。これにより市中心部の新しい文化交流拠点が生まれた。
また、1940年代に広場を向いていた旧正面入口も今回の改修で再び使用されるようになり、来館動線が歴史的起点に立ち戻った。
ビルバオ美術館は1908年に創立し、1945年に現地へ移転した。バスク自治州では古典的な収蔵規模を持ち、グッゲンハイムに次ぐ重要な美術機関である。
今回の空中化による拡張は、歴史的赤レンガ建築を保全しながら地上空間を市民に開放する実務的な解となる。ビルバオ美術館のAgravitasは、保存と拡張の両立を示す一例である。

