グッチ SS27は、デムナが〈The Store Show〉という舞台装置でブランドの衣裳箱を再構成したコレクションである。

今回のショーはデムナ・グヴァサリア(Demna Gvasalia、以下デムナ)が示す最もまとまった〈グッチ像〉を提示した場である。ステージを巨大な専門店に仕立て、男女のルックを順に見せる構成であった。
グッチ SS27 概要
会場は客が店内を回って各ハンガーを覗くような演出で、〈The Rebellious Aristocrat〉や〈The Snob〉、〈The Eccentric〉といった人格を順に見せる形式である。デムナはブランドの多面性を一つの場に寄せ集めたといえる。

メンズの構成と比率遊び
メンズは意図的に抑制されたトーンで始まる。吊り足しのスラックスに靴下を履かないローファーなど、典型的なイタリアンテイストから入る。
しかしすぐにデムナらしいプロポーション変化が現れる。鞍(サドル)ショルダーの細身ジャケットと、対照的な短丈のルーズジャケットに裾が長いデニムという組合せが交互に並ぶ。

シンボルの再構築とホースビット
今回の注目点はホースビット(Horsebit)の扱いである。ホースビットは拡大・反復され、用途まで変えられているため、古い符号を解体して再構成する手法が明確である。
例えば3連の太いベルトには3つのホースビットが並び、特大のホースビットがそのまま衣服のディテールになっている。ロゴを新設するのではなく、既存記号の尺度を変えることで新意匠を作るやり方だ。

ウィメンズの始まりと移行
ウィメンズも日常のワードローブから始まる。テーラードのセットにパンツや膝丈スカートを合わせ、鞍肩のフォルムは肩パッド抜きで輪郭を保っている。
一方で、シャツやルーズなジャケット、ラグビーシャツとAラインのプリーツスカートが80〜90年代のオフィスルックとプレッピースタイルを交差させる。チェック、レザー、ウールが場面を切り替える役割を果たす。

アクセサリーと靴の再配列
アクセサリーはデムナの処方が最もわかりやすい部分である。新作の“都心派”ホースビットバッグは線をそぎ落とした造形で登場した。
バンブーハンドルは多段の革接合で表現され、柔らかなメッセンジャーやパーティバッグへの転用も見られる。GGマーモントやオフィディアも継続して並ぶ。

シューズの狙い
靴も同様の発想である。新しいローファーはスクエアトゥに柔らかいドライビングソールを合わせた。室内用だったタッセルスリッパはストリートへ移されている。
同時に、細いチャンキーヒールやブランドロゴを型押ししたニーハイブーツで劇的な夜の面も補強する。新旧はここで入れ替わり、共存する。
背景と全体の意図
デムナのグッチ理解は、ブランドとロンドンのザ・サヴォイ(The Savoy、ロンドンの高級ホテル)との結び付きを引き合いに出して説明できる。異なる背景の人々が一つの空間で出会うという発想だ。
このため今回の〈The Store Show〉は西服、デニム、ローファーからジュエリー、ファー、イブニングドレスまでを同一の棚に並べる実験場となった。デムナの“complete personal vision”はグッチを自分色に塗り替えることではなく、既存のワードローブを整理し直すことにあると受け取れる。
まとめると、グッチ SS27は抑制と解体を同時に行うコレクションである。象徴は残しつつ、その尺度と配置を変えることで新しい日常を提示している。

